「はやぶさ」最後の日の運用ボード

http://www.bsddiary.net/d/20100823.html   から抜粋

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こいつを読み解いてみよう。 まず左ボード、時系列データとそうでないのと二つに分かれている。 右ボードは主にカプセル関係の時系列データが書かれている。 左ボードをベースに、右ボードの情報をマージして書き下したのが下のテキスト。 `#' から右が俺様の想像による解説だ。 ちなみに俺様全くの門外漢なので、正しい保証は全く無い。 そのつもりで読んでちょ。
-----[左ボード]-----
2010/6/13 PATH 100613 -0200              # 日付
USC34                                    # USC34(鹿児島の内之浦34mアンテナ)で通信を行う

SV: 西山, 尾?                            # スーパーバイザー(運用の現場監督)の名前
当番: 北嶋
IES: なし                                # IES(イオンエンジンシステム)は運用終了したので、担当はいない

天候       , 風速       m/s, 気温        ℃
     ~~~~~~       ~~~~~~          ~~~~~~
R-Delay        sec =        min        sec      # 通信遅延 ??? 秒 = ?? 分 ?? 秒 (「はやぶさ」に電波が届くまでの時間。地球近くなので 1 秒以下だが、イトカワ付近では 14 分以上かかってた)
        ~~~~~~       ~~~~~~     ~~~~~~
S/C status: MGA ジンバル角 125deg (5/27)        # S/C(意味不明)の 状態: MGA(ミドルゲインアンテナ) ジンバル角 125 度 (MGA-A は上下に首振りできる。その角度のこと)
                           ~~~~~~~
            IPM-A: 1204,  IPM-B: 2939 @2007/08/01   # IPM(IES ポインティング機構)はイオンエンジンを上下左右に首振りできる。数値は上下と左右それぞれの角度のことだろう(単位は不明)

AOS 時アンテナ  LGA-C, MODE 27-2048 bps         # AOS(可視開始(可視とは地上アンテナから「はやぶさ」が見える、つまり通信できる位置にあること))) 可視開始時アンテナは LGA(ローゲインアンテナ)-C, モード 27-2048bps (通信速度)
                ~~~~~       ~~~~~~~~
      PLL バンド幅 1Hz   AGC バンド幅 0.3Hz     # 通信のパラメータ。PLL(フェイズロックループ)のバンド幅は 1Hz, AGC(オートゲインコントロール)のバンド幅は 0.3Hz  (PLL とは、通信周波数に多少変化があっても追従する機能, AGC は信号の強さを補正する機能)
----------------------------------------------------------------------
  JST      UTC   # JST: 日本標準時, UTC: 協定世界時
左15:00    06:00 運用開始
左15:01    06:01 uplink / sweep         # 通信リンク(上り) / 通信確立のため周波数を掃波(少しずつ変化させること)する (この段階では通信可能な周波数は正確には分かっていない。一度周波数が合えば PLL によって自動追従する)
左15:05    06:05 CMD_Route_B            # コマンド経路を B に(?)
左15:11    06:11 CMD_HI                 # 謎コマンド
左15:15    06:15 Z軸 -90deg             # Z軸まわりの角度は(+Z(アンテナ面)から見て)-90度
左15:18    06:18 STT_SRCH_START         # STT(スタートラッカー:星を撮影し自分の位置・姿勢を知るためのカメラ)による検索開始(地球を?)
左15:19    06:19 AOS check              # 可視チェック(?)
左15:25    06:25 Sweep 再試行 (XRX-A ロックのため +20kHz) # Xバンド受信機 A の PLL に失敗したので、周波数を変えて掃波しなおし
左15:31    06:31 CMD HI                 # 謎コマンド
左15:33    06:33 STT_SRCH_START (3分おき. 〜6:45 (15:45 JST)) # スタートラッカーによる検索開始
左15:50    06:50 Z軸 -90deg             # Z軸の角度は -90度
左16:04    07:04 CPSL ON (以降, CPSL 関係はもう一枚のボード参照)
右15:51    06:51 カプセル ON      7:05  #(右ボード)
右               カプセル回線接続 7:07  #(右ボード)
右               パラメータ設定   7:08  #(右ボード)
右16:11    07:11 ・ANA ON               #(右ボード) 謎コマンド
右16:21    07:21   ||  BAT INT 7:22 BUS-V 7.36→6.21→6.31 #(右ボード) バッテリーへの指示(?)
左16:26    07:26 TL: XeGJ A, C OPEN  (6/13 7:30 (16:30 JST)) # イオンエンジン A と C の XeGJ(キセノンガスジェット) を 7:30 に開け (+Z面から見て時計周りの回転トルクを生じる)
左16:26    07:26 TL:           CLOSE (6/13 9:30 (18:30 JST)) # 同 9:30 に閉じろ
左16:29    07:29 IRU OMG X, Y, Z リセット # IRU(インターナル リファレンス ユニット)と OMG(ジャイロ??) の X, Y, Z 軸をリセット (角度センサのことだろう)
右16:31    07:31 ・ANA OFF            7:32 7:23 AOCS コマンド #(右ボード) ANA は不明。AOCS は姿勢軌道制御システム
右16:32    07:32 ・パラメータ角セット 7:34 ・TL書き込み シーケンススタート #(右ボード)
左16:44    07:44 MODE_CHNG 6-4K         # テレメトリ切り替え
左16:51:11 07:51:11 CPSL シーケンス開始 # カプセル分離のシーケンス開始
右16:51:11 07:51:11 TL シーケンス開始(T1タイマー)〜7:51:11 #(右ボード)
右                  T1 約2h50mモニタ    #(右ボード)2時間50分モニタ
左17:41    08:41 HCE_CMD_TLM 40, 42, 44 # HCE(ヒータ制御装置) コマンド テレメータ 40, 42, 44 (??)
右17:51    08:51 確認 タイマカウントと TI 一致 #(右ボード)
左18:32    09:32 Z軸 -59deg             # Z軸の角度は -59度
左19:03    10:03 Z軸 -50deg             # Z軸の角度は -50度
左19:28    10:28 姿勢変更完了           # 姿勢変更完了
-----[ 挿入開始 ]-----
右19:09    10:09 TCIU_CPSL OFF          #(右ボード)TCIU(テレメトリ/コマンドインターフェースユニット) カプセル OFF
左19:13    10:13 STT_SRCH_START         # スタートラッカ検索開始
左19:20    10:20 DR 1 sho(e?)t TLM      # DR(データレコーダ) 1 shot テレメトリ (?)
左19:28    10:28 SPCK(SPLK?), ANGCK_DLS # 不明 (角度チェック?)
左19:29    10:29 BC1 33s, BC2 CAM MODE  # BC1 33 秒, BC2 カメラモード (BC 意味不明)
左19:41    10:41 MODE_CHNG 1-4K         # テレメトリ切り替え
右19:41:00 10:41:00 (1)カプセル回線切断 #(右ボード)カプセル回線切断
右19:42:00 10:42:00 (2)MODE 1-4K        #(右ボード)テレメトリ切り替え
右19:43:00 10:43:00 (3)EPT ON           #(右ボード)EPT(衛星プログラムタイマ) ON
右19:44:00 10:44:00 (4)IGARM.3          #(右ボード)謎コマンド
右19:45:00 10:45:00 (5)ヒータ121 DIS    #(右ボード)ヒータ121停止
右19:46:00 10:46:00 (6)CAP_W_CUT        #(右ボード)へその緒切断
右19:47:00 10:47:00 (7)SET_BACK         #(右ボード)謎コマンド
右19:48:00 10:48:00 (8)TL(SEP,STT用書き込み) #(右ボード)カプセル分離とスタートラッカ用のタイムラインコマンド群書き込み19:51:00 10:51:00 CPSL_SEP            # カプセル分離19:51:00 10:51:00 TL CAP SEP          #(右ボード)カプセル分離19:51:10 10:51:10 17-4K               # テレメトリ切り替え
右19:51:00 10:51:00 TL MODE17_4K        #(右ボード)カプセル分離19:51:15 10:51:15 TL STT CAM MODE     #(右ボード)スタートラッカをカメラモードに (カプセル撮影に挑戦?)
右19:51:50 10:51:50 TL AOCU_I_STI       #(右ボード)姿勢軌道制御ユニットに対するコマンド
右19:51:55 10:51:55 TL AOCU_RWA_HLD     #(右ボード)同上。RWAをホールドせよ(?)
左19:56    10:56 DUMP-4K                # ダンプ 4K (通信モード?)
-----[ 挿入終了 ]-----
左20:00    11:00 モード 27_4K           # 通信モードの変更
左20:01    11:01 STT 画像再生           # スタートラッカ画像再生
左20:06    11:06 HCE_P_POWER 300W       # ヒータ制御装置出力 300W20:07    11:07 HCE_NML_MODE_START     # 同ノーマルモード開始
左20:10    11:10 RWZ 3200rpm            # リアクションホイールZ 3200rpm20:15    11:15 ONC 昇温               # 地球撮像のため、冷えていた ONC-W2 広角カメラを温める20:16    11:16 ONC 立ち上げ           # 同立ち上げ20:22    11:22 ONC 撮像 #1            # 地球撮像試行 1 回目20:28    11:28          #2            #           同 2 回目20:28    11:28 RWZ 3200rpm            # リアクションホイールZ 3200rpm20:36    11:36 ONC 撮像 #3            # 地球撮像試行 3 回目20:40    11:40 HCE_P_POWER 400W       # ヒータ制御装置出力 400W20:45    11:45 HRW 起動               # 不明
右20:46:16 11:46:16 (STT) 三軸に戻す    # 三軸制御に戻す
左20:54    11:54 Z軸 +90deg             # Z軸の角度は +90度
左20:55    11:55 ONC 撮像 #4, 露光時間変更 # 地球撮像試行 4 回目20:57    11:57 STT_SRCH_START (3分おき) # スタートラッカで検索開始
左21:03    12:03 ONC 撮像 #5            # 地球撮像試行 5 回目21:08    12:08 LIDAR 昇温             # レーザ高度計を温める
左21:12    12:12 SMP 昇温 (BODY, PRJ)   # サンプラボディーと PRJ の温度上昇
左21:19    12:19 HCE_CMD_TLM 40, 41, 42 # ヒータ制御装置 コマンド テレメトリ 40, 41, 42 (??)
左21:24    12:24 49CH=ENA               # 49CH を有効に(?)
左21:25    12:25 HCE_CMD_TLM 44         # ヒータ制御装置 コマンド テレメトリ 44 (??)
-----[ 改段 ]-----
左21:28    12:28 ONC_W2 処理            # ONC 撮像データを JPEG に(?)
左21:32    12:32 RWZ 375rpm             # リアクションホイールZ 375rpm21:33    12:33 ONC リプロ             # ONC 撮像データを再生(地上に転送)
左21:40    12:40 RWZ 3660rpm            # リアクションホイールZ 3660rpm21:43    12:43 リプロ停止             # 撮像データを再生停止
左21:44    12:44 リプロ(52)             # 再生(52) (撮像データだと思う)
左21:46    12:46 ONC 撮像#6             # 地球撮像試行 6 回目21:52    12:52 LIDAR_ON               # レーザ高度計 ON
左21:57    12:57 ONC 撮像H7             # 地球撮像試行 7 回目22:03    13:03 ONC 処理               # 地球撮像試行 8 回目(これがあの「ラストショット」)22:04    13:04 リプロ 52              # 再生(52)22:06    13:06 ONC 処理               # 地球撮像試行 9 回目(転送はされなかったがメモリには残った筈の「真のラストショット」)22:09    13:09 リプロ 52              # 再生(52)22:13    13:13 TL: LIDAR_HV_EN    (6/13 13:30 (22:30 JST)) # 13:30 にレーザ高度計 HV を有効にせよ(?)
左22:13    13:13 TL: LIDAR_START_EN (6/13 13:31 (22:31 JST)) # 13:31 にレーザ高度計送信 ON せよ
-----[ 改段 ]-----
左22:19    13:19 MODE_CHNG              # テレメトリ切り替え
左22:21    13:21 リプロ 52              # 再生(52)                                        
左22:22    13:22 LIDAR_HV_EN            # レーザ高度計 HV を有効にせよ(?)
左22:22    13:22 LIDAR_START_EN         # レーザ高度計送信 ON (TL が間に合わないので手打ちした)
左22:22    13:22 EPT_ARM_EN             # 衛星プログラムタイマ ARM を有効に(?)
左22:25    13:25 MODE_CHNG 27-2K        # テレメトリ切り替え
左22:26    13:26 uplink OFF             # 通信リンク OFF
左22:28    13:28 LOCK OFF               # PLL ロック OFF22:30    13:30 運用終了               # 運用終了

-----[ 改段 ]-----
[温度]                                  # いろんなとこの温度データ(単位は℃) (CH は測定箇所: 例 122 = SMP BODY, 137= CAP PLT)
 CH  前Los   Aos    Los                 # 前回可視終了時, 可視開始時, 可視終了時
 20  16.3   17.3   21.4  (20.4)         # 20.4 ℃が基準
 22  25.7   24.7   30.8   > 10          # 10℃以上であること
107   9.7    9.7    9.2   〜10          # 10以下であること
~~~                       ~~~~
109 -28.3  -27.8  -21.6   >-30          # -30℃以上であること
 66  36.3   35.3   38.9  [35℃]         # 35℃が基準
~~~                       ~~~~
123 -30.5  -30.5    6.8   >-35          # 35℃以上であること
 12   9.9    8.9    9.9   < 39          # 39℃以下であること
 16   4.8    4.8    9.9
P-F   0.22   0.22   0.22  MPa           # 単位はメガパスカル(圧力)

[IES] F =    mN 中和器電圧監視不要      # イオンエンジン出力 (単位はミリニュートン)
流量    30/31  (6/9 3:51)               # キセノンガスの流量(?)


---------------------------------
        前LOS    AOS      LOS           # 前回可視終了時, 可視開始時, 可視終了時
RW-Z    1720     1748     3659          # リアクションホイールZ 回転数
(rpm)   ~~~~     ~~~~~    ~~~~